恋は麻薬のように…

Reward, Motivation, and Emotion Systems Associated With Early-Stage Intense Romantic Love.

J Neurophysiol 94: 327–337, 2005; doi:10.1152/jn.00838.2004.

 

(いったいぜんたい、なぜこの論文を取り寄せたのかも、今となってはすっかり忘れてしまいました。)

 

「恋愛」は古今東西、万国共通に人の心を狂わせます。

恋に落ちた人は、奇妙な(麻薬のような)多幸感につつまれ、気持ちは恋する相手のことばかりに集中し、強迫的にそのことばかり考え続け、一緒になることを渇望し、エネルギーが過剰になり、夜も眠れず、食欲もなくなり…、とまるでコカイン中毒のようになると言います。

 

さらに、恋愛にはどこかギャンブル的なところもあります。もしかしたら大きなリスクがあるかもしれないのに、何かに突き動かされてしまうのです。実際、それで身を滅ぼしてしまう人だっているかもしれません。

 

…ということは、コカイン中毒やギャンブルと同じ脳の回路(ドーパミンによる報酬回路)が過剰に使われている? と思って実際に「恋愛の初期」にある若い男女を集めて、脳の活動をfMRIで撮ってみたのが、この研究。

 

結果は、予想通りでした。

麻薬依存やギャンブル依存などで、その回路が過剰に働いていることが知られているドーパミン系による報酬回路がある腹側被蓋野(VTA=ventral tegmental area)の活動が過剰に高まっていたのです。

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どうりで恋愛は人をおかしくさせるわけです。

 

とはいえ、この報酬回路による動機づけがあるおかげで、私たちは(私たち以外の哺乳類もそうなのですが)「異性だったら誰でもいい(性欲オンリー)」ではなく、特定の誰かに気持ちが集中することによって、進化論的な意味のある「配偶者選択 mate choice」をする能力を得てきたわけです。

人をおかしくする「恋愛」は、進化が与えた「知恵」でもあったわけで、なんだか不思議です。